冬季における寒冷環境では、睡眠中に暖房を常時使用しない人が多く、極めて不適切な温・湿度環境で就眠しています。そこで良好な睡眠を確保するために、適切な寝具による寝床内気候の調整が有効であると考えました。
寝具に関する実験はその数も少なく、大部分が実験室内で若年者を対象としたものであり、フィールドでの睡眠を対象としたものは、知られておりません。
そこで、イワタでは自宅で中高年者を対象に、適切に調整された寝具が寝床内気候と睡眠に及ぼす効果を検討するために、終夜睡眠時の寝床内気候と睡眠内容について対象者が選択し、普段から慣れ親しんでいる従来の寝具を使用した条件と比較検討を行いました。
対象
- 研究の目的を十分に説明し、同意の得られた健康な50歳以上の中高年者男女6名(男性1名、女性5名、50~59歳)
方法
2009年12月~2010年2月の冬季に参加者の各自宅にて測定を実施。
- 普段参加者が使用している敷き寝具、掛け寝具(C条件)
- 冬季の寒冷環境で適切な寝床内温湿度を保てるように調整された寝具(E条件)
→掛け寝具:羽毛布団
→敷き寝具:ヤク・キャメル三層敷きパッド
①②の2条件を設定し、その寝ごこちや寝床内温湿度などがどう違うかを各自宅にて比較検討しました。
結果
普段の寝具(C条件)と調整された寝具(E条件)の両条件間の室内温・湿度を比較したところ、C条件では14.2℃、E条件で10.4℃とE条件の方が室内温度が3.8℃も有意に低いことが分かりました(※表1)。
次に、寝床内湿度について図2に示しました。
寝床内湿度については、胸部・足部ともに調整された寝具(E条件)で、どの時間経過でも湿度が低い傾向にありました。
つまり、調整された寝具(E条件)では、布団の中の温度を温かく保つとともに、布団の中が蒸れることなく湿度も低く調整し、快適な寝床内環境を作ることができていたことが分かりました。
寝床内気候を測定するとともに、本研究ではアクチグラフを用いて睡眠状態について評価を行いました。(※表2)
その結果、寝付きにかかる時間がC条件で11.8分だったのが、E条件では9.8分と2分短縮し、夜中に目が覚める時間は、C条件で12.4分だったのがE条件では8.3分と4.1分短縮していました。
また、寝付き状態についてのアンケート結果を図4に示しました。
寝付きについても、E条件で得点が高く、改善していることが分かりました。
以上の結果から、適切に調整された寝具を用いることで、寝床内気候を改善することが示唆され、良好な寝床内気候を適切な寝具で確保できることが分かりました。
また、今回は参加者の各自宅での測定でしたが、フィールドでの評価でも睡眠感が改善できるということが示されました。
※本研究は、2010年7月1日(木)~2日(金)に開催されました日本睡眠学会第35回定期学術集会(名古屋国際会議場)にて発表されたものです。
※本研究の内容を無断で転載しないでください。